退職金の運用、誰に相談する? 相談の前に決めておきたい「使い道」と、受け取ったあとに確かめる順番

退職金の運用、誰に相談する? 相談の前に決めておきたい「使い道」と、受け取ったあとに確かめる順番 コラム

この記事の結論

退職金の運用を考えるときは、「どこで増やすか」より先に、「何のためのお金か・いつ使うか」を分けるところから始めます。

  • まず、税金の手続きと手取りの額を確かめる
  • 次に、退職金を使う時期で分ける(すぐ使う/数年で使う/年金の足りない分/当面使わない)
  • 運用を考えるのは、当面使わないお金だけ

使い道が分かれていると、どこに相談するときも、話が具体的になります。

受け取ったら、確かめる順番

退職金を受け取ったら確かめる順番(国税庁 タックスアンサーNo.1420・No.2732)。1 税金の手続きを確かめる:退職所得の受給に関する申告書を出したか。出していないと20.42%が引かれ、確定申告で精算する。2 手取りの額を確かめる。3 使い道で分ける:すぐ使う・数年で使う・年金の足りない分・当面使わない。4 当面使わないお金だけ、置き場所を考える

退職金は、一度に大きな額が振り込まれます。運用の話を聞く前に、次の順で確かめておくと、落ち着いて考えられます。

  1. 税金の手続きを確かめる
  2. 手取りの額を確かめる
  3. 使い道で分ける
  4. 当面使わないお金だけ、置き場所を考える

1. 税金の手続き:「退職所得の受給に関する申告書」

退職金には、退職所得として税金がかかります。ただし、勤めた年数に応じた「退職所得控除」があり、その分には税金がかかりません。

国税庁によると、退職金を受け取る前に、勤め先へ「退職所得の受給に関する申告書」を出しているかどうかで、手続きが変わります。受け取ったあとは、出していたかを確かめておきましょう。

申告書手続き
出した勤め先が税額を計算して差し引く。その退職金については、原則として確定申告は要らない
出していない退職金の額の20.42%(所得税と復興特別所得税)が差し引かれる。確定申告で精算する

国税庁は、令和9年(2027年)以後は「所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税」として差し引くと案内しています。あわせて復興特別所得税の率が下がるため、合計の率は変わらず、源泉徴収の計算方法も変わらないとしています。

なお、医療費控除などで確定申告をするときは、退職所得も申告書に書きます(国税庁)。

税金がかからない額の目安(退職所得控除)

国税庁の計算方法は、次のとおりです。

勤めた年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 年数(80万円に満たないときは80万円)
20年を超える800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)

例:38年勤めた場合800万円 + 70万円 ×(38年 − 20年)= 2,060万円

ほかの退職金との調整がない一般的な場合、退職金がこの額までなら、退職所得としての税金はかかりません。超えた分は、その2分の1が退職所得になります(勤めた年数が5年以下の場合や、役員として勤めた年数が5年以下の場合などは、計算が違います)。

勤めた年数に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げて数えます(国税庁)。また、前年以前に退職金を受け取ったことがあるときや、同じ年に2か所以上から受け取るときは、控除額の計算が変わることがあります。ご自身の場合は、勤め先や税務署で確かめましょう。

2. 手取りの額を確かめる

振り込まれた額と、差し引かれた税金を確かめます。これからの計画の元になるのは、額面ではなく手取りです。

3. 使い道で、4つに分ける

退職金を使う時期で4つに分ける。① すぐ使えるお金:急な出費や生活費の予備。すぐ引き出せる預金に。② 数年で使うお金:家の修繕・車・ローンの残りなど予定が決まっているもの。使う時期に合わせて減らさない置き場所に。③ 年金の足りない分:(毎月の生活費−年金)×12か月×年数。取り崩す時期と額を先に決める。④ 当面使わないお金:①〜③を分けたあとに残るお金。運用を考えるのはここだけ

手取りが分かったら、使う時期で分けてみます。

① すぐ使えるお金

急な出費や、生活費の予備です。すぐに引き出せる預金で置いておきます。目安の考え方は、生活防衛資金の記事でまとめています。

② 数年のうちに使うお金

家の修繕、車の買い替え、住宅ローンの残りなど、使う予定と時期がある程度決まっているお金です。使う時期が近いお金は、値動きで減ると困ります。

③ 年金の足りない分

老後の毎月の生活費と、年金の額との差です。

(毎月の生活費 − 毎月の年金)× 12か月 × 年数

これは目安の計算です。年金が生活費を上回るなら、この分は0円です。年金を受け取り始める前の生活費や、①②に入れた出費は、ここに重ねて入れないようにします。

年金の額は、ねんきん定期便で確かめられます。何歳から、毎年いくら取り崩すかを先に考えておくと、退職金のうち「老後の生活費に使う分」がはっきりします。

④ 当面使わないお金

①〜③を分けたあとに残るお金です。運用を考えるのは、このお金だけです。

4. 当面使わないお金の、置き場所の考え方

金融庁の「資産形成の基本」では、預貯金・株式・債券・投資信託などの金融商品を、安全性・収益性・流動性(すぐ現金にできるか)で比べています。そのうえで、3つとも優れた金融商品はなく、目的に応じて使い分けることを勧めています。

また、金融庁は、資産形成の考え方として長期・積立・分散を挙げています。

  • 積立:一度にまとめて投資するのではなく、決まった額を続けて投資する
  • 分散:値動きの違う資産に分けると、価格の変動をある程度抑えられる

退職金のようにまとまったお金でも、いつ使うかによって、向いている置き場所は変わります。

どこに相談するときも、確かめたいこと

退職金の運用は、銀行・証券会社・保険会社・ファイナンシャルプランナーなど、相談できるところがいくつもあります。どこに相談するときも、次のことは自分で確かめておくと安心です。

  • 使い道を分けたメモを持っていく(上の①〜④)
  • 説明を受けた商品の手数料(買うとき・持っているあいだ・売るとき)
  • 値動きのリスク:元本が減ることがあるか、どのくらい動くか
  • いつ引き出せるか:途中で引き出すと費用がかかるか
  • その場で決めず、持ち帰って考えられるか

「退職金だから、今すぐ何かしないと」と急ぐ必要はありません。使い道が決まるまでは、預金で置いておくのも一つの考え方です。

まとめ

  • 退職金の運用は、「何のためのお金か・いつ使うか」を分けるところから
  • 受け取るときは「退職所得の受給に関する申告書」を出したかを確かめる。出していないと20.42%(2026年の率)が引かれ、確定申告で精算する
  • 退職所得控除の例:38年勤めたら、一般的な場合は2,060万円まで税金がかからない
  • 手取りを、すぐ使う/数年で使う/年金の足りない分/当面使わない、の4つに分ける
  • 運用を考えるのは、当面使わないお金だけ
  • どこに相談するときも、手数料・リスク・いつ引き出せるかを確かめる

ご相談のご案内

この記事では、退職金を受け取ったあとに確かめる順番と、使い道の分け方を一般的にまとめました。ご相談では、年金の額と毎月の生活費をもとに、退職金のうち老後の生活費に使う分・数年で使う分・当面使わない分を分け、NISA・iDeCo・預貯金などをどう使い分けるかの考え方を一緒に整理します。Life Design ifは、投資信託・株式などの販売はしていません。まずは1分の簡易チェックで、「老後のお金」に向いている置き場所の考え方を見てみることもできます(相談無料/対面:香川・徳島、オンライン:全国)。

※この記事は、制度の一般的な説明です。特定の金融商品をおすすめするものではありません。退職金にかかる税金は、勤めた年数や受け取り方で変わります。ご自身の場合は、勤め先や税務署でご確認ください。


出典

(2026年10月17日時点の情報です)

この記事を書いた人

西岡 竜二(にしおか りゅうじ)。if株式会社 代表取締役。2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP。徳島県美馬市出身。2014年に生命保険会社に入社し、新人部門で営業成績1位・本社表彰。新人の育成や管理職も経験。2022年にif株式会社を設立し、生命保険代理店「Life Design if」での保険とお金の相談、バックオフィス支援、研修・セミナーの3つの事業をしています。「商品を選ぶ前に、人生を考える」を大切に、保険とお金の「分からない」に答えるコラムを書いています。詳しいプロフィール ›

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