雇用保険と労災保険の違い|失業・育休・仕事中のけがで受けられるもの

雇用保険と労災保険の違い|失業・育休・仕事中のけがで受けられるもの コラム

この記事の結論

雇用保険と労災保険は、まとめて「労働保険」と呼ばれる公的な保険です。会社などに雇われて働く人を支えます。

  • 雇用保険:仕事を辞めたとき、育児や介護で休むとき、学び直すときに給付があります。週20時間以上働く人などが入ります。
  • 労災保険:仕事中・通勤中のけがや病気のときに給付があります。パート・アルバイトも含め、雇われて働く人は原則みな対象です。

仕事と関係のない病気やけがは、労災ではなく、健康保険の傷病手当金の対象です。自営業・フリーランスの方は、原則どちらにも入りません。

まず、公的な保障で何がまかなえるかを知る。民間の保険は、足りない分だけを考える。この順番で見ていきましょう。

雇用保険と労災保険の違い

雇用保険と労災保険の違い(2026年10月時点)。雇用保険:使う場面は、仕事を辞めたとき(基本手当)、育児で休むとき(育児休業給付。休業前の賃金の67%、181日目から50%)、家族の介護で休むとき(介護休業給付。67%、同じ家族で通算93日・3回まで)、学び直すとき(教育訓練給付)。入るのは週20時間以上・31日以上働く見込みの人(2028年10月から週10時間以上)。保険料は本人と会社で負担(本人は賃金の0.5%、2026年度・一般の事業)。窓口はハローワーク。労災保険:使う場面は、仕事中・通勤中のけがや病気の治療(指定の医療機関なら無料)、休業(4日目から給付基礎日額の80%)、障害が残ったとき・亡くなったとき(年金・一時金)。パート・アルバイトを含め、雇われて働く人は原則みな対象。保険料は会社が全額負担。窓口は労働基準監督署。自営業・フリーランスは原則どちらも入らない(労災は特別加入の制度あり)

働き方によって、入る保険が違います。週20時間未満のパート・アルバイトは、雇用保険には入りませんが、労災保険の対象です。

雇用保険料の本人負担は、賃金の0.5%です(2026年4月〜2027年3月、一般の事業。農林水産・清酒製造・建設の事業は0.6%)。

雇用保険で受けられるもの

入る条件

次の2つを満たすと入ります。パート・アルバイトなどの働き方や、本人の希望には関係ありません(厚生労働省)。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上雇われる見込みがある

2028年10月1日から、時間の条件が「週10時間以上」に広がります。新しく入る人も、基本手当や育児休業給付などは今の加入者と同じです。

仕事を辞めたとき:基本手当

いわゆる「失業保険」です。ハローワークで仕事を探していて、働く意思と能力があるのに仕事に就けない間、日ごとに出ます。

  • 条件:辞める前の2年間に、加入期間が12か月以上(倒産・解雇などは、辞める前の1年間に6か月以上)
  • 1日あたりの額:辞める前6か月の賃金(ボーナスを除く)を180で割った額の、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)
  • 1日あたりの上限(2026年8月1日現在):30歳未満 7,450円/30〜44歳 8,270円/45〜59歳 9,110円/60〜64歳 7,830円
  • 日数:自己都合などで辞めた人は90〜150日。倒産・解雇などで辞めた人は最大330日(障害などで就職が難しい人は最大360日)。年齢・加入期間・辞めた理由で決まります
  • 受け取れる期間:原則、辞めた日の翌日から1年

正当な理由のない自己都合で辞めた人は、手続きの日から7日の待期のあと、さらに原則1か月は出ません(2025年4月1日以降に辞めた人。それより前は2か月)。

  • 辞めた日までの5年間に、自己都合で辞めて受給資格の決定を2回以上受けている人は、3か月です
  • 自分の重い責任で解雇された人(重責解雇)も、3か月です
  • 辞める前の1年以内か辞めたあとに、国が指定する教育訓練を受けた場合は、この期間がなくなります

65歳以上で辞めた人は「高年齢求職者給付金」で、基本手当の30日分か50日分を一度に受け取ります。

育児で休むとき:育児休業給付

子どもが原則1歳になるまで(保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで)の育児休業中に出ます。

  • 休業前の賃金の67%(休業181日目からは50%)
  • 条件:休業を始める前の2年間に、給料の支払いの対象になった日(有給休暇の日も含む)が11日以上ある月が、12か月以上あること(11日に届かない月は、80時間以上なら数えます)

2025年4月1日から、「出生後休業支援給付」が加わりました。子どもが生まれてすぐの期間(原則8週間。産後休業をした母は16週間)に、本人が通算14日以上の育休を取ると、最大28日分に13%が上乗せされ、合計80%になります。原則は配偶者も14日以上の育休が条件です。ただし、配偶者が産後休業中・働いていない・自営業などのときは、本人だけで対象になります。

厚生労働省は、社会保険料の免除などと合わせて「手取り10割相当」と説明しています。ただし、休業開始時の賃金日額には上限(16,540円。2027年7月31日までの額)があることに注意が必要です。

同じ日から、2歳未満の子のために時短で働く人への「育児時短就業給付」(時短中の賃金の10%など)も始まりました。

家族の介護で休むとき:介護休業給付

  • 休業前の賃金の67%
  • 同じ家族について、通算93日まで・3回まで分けて取れる
  • 1か月あたりの上限は366,222円(毎年8月1日に見直し)
  • 対象は、2週間以上、常に介護が必要な家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母など)

学び直すとき

国が指定する講座の費用の一部が出る「教育訓練給付」があります(2024年10月1日から、条件を満たすと最大80%)。2025年10月1日からは、無給の休暇を取って学ぶ間の「教育訓練休暇給付金」も始まりました(加入期間5年以上など)。

辞めてすぐの生活費をどれだけ手元に置くかは、次の記事にまとめています。

労災保険で受けられるもの

対象になるとき

仕事中のけがや病気(業務災害)と、通勤中のけがなど(通勤災害)が対象です。正社員・パート・アルバイトなど、雇われて働く人は原則みな対象です。

仕事中・通勤中のけがで病院にかかるときは、健康保険は使えません。窓口で「仕事中(通勤中)のけが」と伝えます(協会けんぽ)。

主な給付(2026年4月1日現在)

  • 治療を受ける(療養(補償)給付):労災病院・労災指定の医療機関なら無料です
  • 休んで給料が出ない(休業(補償)給付):休業4日目から、給付基礎日額の80%です(60%+特別支給金20%)
  • 障害が残った(障害(補償)給付):1〜7級は年金で、給付基礎日額の313〜131日分です。8〜14級は一時金で、503〜56日分です。ほかに障害特別支給金(8万〜342万円)があります
  • 亡くなった(遺族(補償)給付):遺族の人数で、年金が153〜245日分です。ほかに遺族特別支給金300万円があります

給付基礎日額は、原則、けがの前3か月の賃金の合計(ボーナスを除く)を、その期間の日数(休日も含む)で割った額です。月給20万円の例では1日6,522円。休業4日目から、1日5,217円が出ます(厚生労働省の計算例)。

  • 最初の3日間(待期)は、仕事中のけがなら、会社が平均賃金の60%を払います。通勤中のけがは、会社の補償はありません
  • 通勤中のけがは、最初の休業給付から200円が差し引かれます
  • 遺族の年金を受け取れるのは、亡くなった人の収入で生活していた家族です。妻以外は、年齢などの条件があります

2027年4月1日から変わること

2026年7月17日に公布された法律で、次のことが決まっています。

  • 遺族の年金で、夫だけにあった「妻が亡くなったとき55歳以上など」の条件がなくなる
  • 遺族が1人のときの年金額が、一律175日分になる(今は153日分。55歳以上などの妻だけ175日分)
  • 判断に時間がかかる病気は、治療費などの請求の期限が2年から5年になる。対象の病気は、今後、政令で決まる予定(脳・心臓の病気や心の病気などが考えられている)

傷病手当金との違い:原因が仕事かどうか

病気やけがで働けないときに使う制度の見分け方。原因は仕事中・通勤中か? はい→労災保険:治療は指定の医療機関なら無料、休業4日目から給付基礎日額の80%、パート・アルバイトも対象、健康保険は使えない。いいえ→健康保険の傷病手当金:会社の健康保険に入っている本人だけ(扶養の家族は対象外)、連続3日休んだあと4日目から、標準報酬月額の平均÷30×3分の2、通算1年6か月まで。自営業(国民健康保険)は、傷病手当金も労災も原則なし(労災は特別加入の制度あり)。どの場合も、公的な保障で足りない分を、貯蓄や民間の保険で考える

病気やけがで働けないとき、使う制度は原因で決まります。どちらを使うかを、本人や会社が選ぶことはできません(協会けんぽ)。

受け取れる期間も違います。

  • 労災の休業(補償)給付:療養のために働けず、給料を受けない間、続きます。1年6か月たっても治らず、障害が重いときは、傷病(補償)年金に移ります
  • 傷病手当金:支給を始めた日から、通算1年6か月までです

傷病手当金の計算例と、医療費の上限のくわしい仕組みは、次の記事にまとめています。

自営業・フリーランスの場合

雇用保険は、雇われて働く人のための保険です。自営業・フリーランスの方には、基本手当や育児休業給付・介護休業給付はありません。

労災保険も、原則入りません。ただし「特別加入」という制度で、中小企業の社長や一人親方などは、自分で選んで入れる場合があります。2024年11月1日からは、企業などから仕事を受けるフリーランス(人を雇っていない人)も対象になりました。

フリーランスの場合は、特別加入団体を通じて申し込みます。保険料は、選んだ給付基礎日額(3,500〜25,000円の16段階)の365日分の0.3%です。日額1万円なら、年10,950円です(厚生労働省)。

国民健康保険には、傷病手当金も原則ありません。働けない間や仕事がない間の生活費を、貯蓄や民間の保険でどう考えるかが大切になります。

公的な保障を知ってから、足りない分を考える

自分で確かめる順番は、次の3つです。

  1. 入っている保険を確かめる:給与明細で、雇用保険料が引かれているか。勤務先に独自の制度(休業中の補償など)があるかも見ます
  2. 場面ごとに、公的な保障を書き出す:仕事を辞めたとき、育児・介護で休むとき、仕事中のけが、仕事以外の病気。それぞれ「いくら・いつまで」出るかを書きます
  3. 足りない分だけを、貯蓄や民間の保険で考える:給付には上限と期間があります。足りない分を貯蓄でまかなえるかを先に見ます

保険を見直す手順と、見直しどきの目安は、次の記事にまとめています。

まとめ

  • 雇用保険:仕事を辞めたとき・育児や介護で休むとき・学び直すとき。週20時間以上で入り、2028年10月から週10時間以上に広がる
  • 労災保険:仕事中・通勤中のけがや病気。パート・アルバイトも対象で、保険料は会社が全額
  • 仕事以外の病気やけがは、健康保険の傷病手当金
  • 自営業・フリーランスは原則どちらも入らない(労災は特別加入の制度あり)
  • 公的な保障を先に知り、足りない分だけを貯蓄や民間の保険で考える

ご相談のご案内

この記事では、雇用保険と労災保険の仕組みを一般的にまとめました。ご相談では、あなたの働き方で受けられる公的な保障を場面ごとに書き出し、足りない分があるか、今の保険と重なっていないかを確かめる方法をお伝えします(相談無料/対面:香川・徳島、オンライン:全国)。

※この記事は、雇用保険と労災保険の一般的な説明です。特定の保険会社・商品をおすすめするものではありません。実際に受け取れるかどうかや金額は、加入期間・賃金・辞めた理由・年齢などによって違います。


出典

(2026年10月14日時点の情報です)

この記事を書いた人

西岡 竜二(にしおか りゅうじ)。if株式会社 代表取締役。2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP。徳島県美馬市出身。2014年に生命保険会社に入社し、新人部門で営業成績1位・本社表彰。新人の育成や管理職も経験。2022年にif株式会社を設立し、生命保険代理店「Life Design if」での保険とお金の相談、バックオフィス支援、研修・セミナーの3つの事業をしています。「商品を選ぶ前に、人生を考える」を大切に、保険とお金の「分からない」に答えるコラムを書いています。詳しいプロフィール ›

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