この記事の結論
公的年金は、老後のお金だけではありません。老齢・障害・遺族の3つの年金があります(厚生労働省)。
- 老齢年金:原則65歳から、亡くなるまで受け取る
- 障害年金:病気やけがで、生活や仕事に大きな支障が出たときに受け取る
- 遺族年金:家計を支える人が亡くなったときに、家族が受け取る
しくみは2階建てです。1階の国民年金には、20歳以上60歳未満の人が入ります。2階の厚生年金には、会社員・公務員が入ります。自営業・フリーランスの人は、1階だけです。
保険料が払えないときは、未納のままにせず、免除・猶予の手続きをします。障害年金・遺族年金を受け取る条件に関わるからです。
公的な保障を先に知り、民間の保険は足りない分だけを考えます。
公的年金は「2階建て」:誰がどれに入るか

- 第1号(自営業・フリーランス・学生・無職の人など。20歳以上60歳未満):国民年金(1階)だけ。保険料は2026年度は月17,920円で、自分で納めます。2027年度は月18,290円です。
- 第2号(会社員・公務員):国民年金(1階)+厚生年金(2階)。保険料は、標準報酬月額と標準賞与額の18.3%です。会社と半分ずつで、本人は9.15%を給料から天引きされます。
- 第3号(会社員・公務員に扶養される配偶者。20歳以上60歳未満、原則年収130万円未満):国民年金(1階)だけ。本人の保険料の負担はありません。
パート・アルバイトの場合
次のどちらかなら、会社員と同じく厚生年金に入ります(日本年金機構・厚生労働省)。
- 働く時間と日数が、同じ職場のフルタイムの人の4分の3以上
- 4分の3未満でも、週20時間以上・2か月を超えて働く見込み・学生でない・従業員51人以上の会社(国・自治体の職場は人数に関係なし)
「月8.8万円以上」の条件は、2026年10月になくなりました。会社の規模の条件は、2027年10月から段階的に広がります。年収130万円未満でも、厚生年金に入れば第3号ではなくなります。
会社員と自営業の違い
| 会社員・公務員(第2号) | 自営業・フリーランス(第1号) | |
|---|---|---|
| 老齢年金 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金 | 老齢基礎年金 |
| 障害年金 | 障害基礎年金(1・2級)+障害厚生年金(1〜3級) | 障害基礎年金(1・2級) |
| 遺族年金 | 遺族基礎年金(子どもがいる場合)+遺族厚生年金 | 遺族基礎年金(子どもがいる場合)。ほかに寡婦年金・死亡一時金 |
| 老齢年金の例(2026年度・月額) | 男性 176,793円/女性 134,640円 | 男性 63,513円/女性 61,771円 |
※老齢年金の例は、厚生労働省の概算です。会社員の欄は厚生年金の期間が20年以上、自営業の欄は第1号の期間が20年以上の人の平均です。自営業の欄にも、厚生年金に入っていた期間(平均で男性7.6年・女性6.5年)の分が少し入っています。
自営業の人は、老齢・障害・遺族のどれも、2階の分がありません。
1. 老齢年金:原則65歳から、亡くなるまで
- 受け取る条件:保険料を納めた期間と、免除された期間などの合計が10年以上。未納の期間は数えません
- 老齢基礎年金(1階):40年(480か月)納めると満額。2026年度は年847,300円(月70,608円)です(昭和31年4月1日以前生まれは年844,900円)
- 老齢厚生年金(2階):厚生年金に入っていた間の給料(賞与を含む)と、入っていた月数で決まります
2階は、次の式で目安を出せます(2003年4月以降の期間)。
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
平均標準報酬額は、賞与も含めた月の給料の平均です。平均35万円なら、1年入るごとに年約2.3万円ずつ増える計算です(実際は再評価などで変わります)。
受け取り始める時期は、60〜75歳で選べる
- 早める(繰上げ):1か月あたり0.4%減。60歳からなら24%減(昭和37年4月2日以後生まれ)。減った額は一生続き、あとから取り消せません。障害年金の一部(事後重症)や寡婦年金を受けられなくなります
- 遅らせる(繰下げ):1か月あたり0.7%増。75歳からなら84%増(75歳まで遅らせられるのは、昭和27年4月2日以後生まれの人)。加給年金・振替加算は増えません
老後に毎月いくら足りないかは、年金の見込みと暮らしの支出から出します。
2. 障害年金:病気やけがで、生活や仕事に支障が出たとき
障害年金は、初診日(その病気やけがで、初めて医師などにかかった日)に入っていた制度で決まります。
- 初診日に会社員・公務員:障害基礎年金(1・2級)+障害厚生年金(1〜3級)
- 初診日に自営業など:障害基礎年金(1・2級)だけ
障害の程度は、原則、初診日から1年6か月を過ぎた日(障害認定日)で決めます。
受け取る条件(保険料の納め方)
初診日の前日に、次のどちらかを満たしていることが必要です。
- 初診日の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間が3分の2以上
- 初診日が2036年3月末までで65歳未満なら、初診日の前々月までの直近1年に未納がない
20歳前で、年金に入っていない期間に初診日がある場合は、この条件はありません。
金額(2026年度・昭和31年4月2日以後生まれ)
| 級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
|---|---|---|
| 1級 | 年1,059,125円 | 報酬比例部分×1.25 |
| 2級 | 年847,300円 | 報酬比例部分 |
| 3級 | なし | 報酬比例部分(最低635,500円) |
- 障害基礎年金には子どもの加算があります(1・2人目は1人年243,800円、3人目からは1人年81,300円)
- 障害厚生年金の1・2級は、生計を維持する65歳未満の配偶者がいると年243,800円が加わります
- 障害厚生年金は、加入が300か月(25年)未満でも、300か月として計算します
程度の目安は、2級が日常生活がとても難しく働いて収入を得られない状態、3級が働くことに大きな制限がある状態です(日本年金機構)。
働けない間の健康保険の給付や、医療費の上限は、それぞれの記事にまとめています。
くわしく読む



3. 遺族年金:亡くなったとき、家族が受け取る
遺族基礎年金(1階)
- 受け取る人:亡くなった人に生計を維持されていた「子どものいる配偶者」か「子ども」。子どものいない配偶者は受け取れません
- 子ども:18歳になった年度の3月31日まで(障害等級1・2級なら20歳未満)
- 金額(2026年度):年847,300円+子どもの加算。子ども2人なら年1,334,900円です
遺族厚生年金(2階)
- 受け取る場合:会社員・公務員として加入中に亡くなったときなど
- 金額:亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3。加入中に亡くなった場合などは、加入が300か月未満でも300か月として計算します
- 子どものいない配偶者:今の制度では、30歳未満の妻は5年間だけ。夫は、妻が亡くなったときに55歳以上の場合だけで、受け取りは60歳からです
遺族厚生年金は、2028年4月から見直されます。子どものいない60歳未満の配偶者は、原則5年の給付になります(女性は段階的に)。すでに受け取っている人などは、影響を受けません(厚生労働省)。
自営業の人が亡くなったとき
遺族厚生年金はありません。子どもがいなければ、遺族基礎年金もありません。
遺族基礎年金には、加入中に亡くなった場合などは、障害年金と同じような保険料の条件があります(3分の2以上、または2036年3月末までの死亡で65歳未満なら直近1年に未納がない)。
遺族基礎年金を受け取れないときは、条件を満たすと、寡婦年金(妻が60〜65歳の間)か死亡一時金(12万〜32万円)の、どちらか一方を受け取れます。寡婦年金は、亡くなった夫に第1号として保険料を納めた期間(免除を含む)が10年以上あるときです。死亡一時金は、第1号として保険料を納めた月数が36か月以上あるときです。
くわしく読む



「未納」と「免除・猶予」は大きく違う

国民年金の保険料を自分で納めるのは、第1号の人です。収入が減ったときなどは、申請して認められると、保険料が免除・猶予されます。
- 免除・猶予の期間は、老齢年金の「10年」に数えます。未納の期間は数えません
- 全額免除の期間は、納めた場合の2分の1が、老齢基礎年金の額に入ります。未納の期間は、額が増えません
- 免除・猶予の期間は、障害年金・遺族年金の保険料の条件にも数えます
- 納付猶予(20歳以上50歳未満)と学生納付特例は、追納しないと額には入りません
- 免除・猶予された保険料は、10年以内なら、あとから納められます(追納)
- 未納の保険料は、納める期限から2年を過ぎると、納められなくなります
- 失業などのときは、前年の所得にかかわらず免除・猶予を受けられる特例があります
- 病気やけがのあとで、さかのぼって申請しても、障害基礎年金の保険料の条件には数えられません
申請は、市区町村の国民年金の窓口か、年金事務所でできます(電子申請も可)。
自分の見込みを確かめる3つの方法
| 方法 | 分かること | 使い方 |
|---|---|---|
| ねんきん定期便 | 加入期間・納めた保険料・年金額(50歳以上は見込額) | 毎年、誕生月に届く。35・45・59歳は封書で、全期間の記録 |
| ねんきんネット | 年金記録、将来の見込額の試算、電子版の定期便 | マイナポータルとの連携か、ユーザIDで登録 |
| 公的年金シミュレーター(厚生労働省) | 働き方を変えたときの見込額。2026年4月から障害年金の試算も(試験運用) | ID・パスワードは不要。定期便の二次元コードを読むと入力が楽 |
見るところは、未納の月や、加入の記録の漏れがないかです。50歳未満の定期便の額は、これまでの加入実績に応じた額で、これから納める分は入っていません。
「年金は払い損?」は老後の年金だけで見ない
厚生労働省は、公的年金を、老齢・障害・死亡に社会全体で備える「広い意味の保険」と説明しています。
- 保険料を払っている間も、障害と遺族の保障が続いている
- 老齢年金は、亡くなるまで受け取れる
- 年金額は、物価や賃金の変動に合わせて、毎年度改定される(伸びを抑える仕組みもある)
受け取る額は、人によって違います。損得は、老後の年金の額だけでなく、障害・遺族の保障も入れて考えます。
公的な保障を知ってから、民間の保険は足りない分だけ
- 公的年金で、いくら受け取れるかを知る(老齢・障害・遺族)
- 暮らしの支出と比べて、差を出す
- 貯蓄や勤務先の制度など、今ある備えでまかなえない分を、民間の保険で考える
足りない分 = 支出 − 公的年金などの収入 − 今ある備え
このテーマの全体の流れ(完全ガイド)

まとめ
- 公的年金は、老齢・障害・遺族の3つ。2階建てで、自営業の人は1階(国民年金)だけ
- 老齢基礎年金の満額は、2026年度で年847,300円。納めた期間と免除などの期間が10年以上必要
- 障害年金・遺族年金は、保険料の納め方が条件になる。払えないときは、未納にせず免除・猶予の手続きを
- 見込みは、ねんきん定期便・ねんきんネット・公的年金シミュレーターで確かめる
- 公的な保障を先に知り、民間の保険は足りない分だけを考える
ご相談のご案内
この記事では、公的年金のしくみを一般的にまとめました。ご相談では、ねんきん定期便の数字と今の保険・貯蓄を並べて、足りない分をご自身で計算し直せるように整理します。見直さない、という結論になることもあります(相談無料/対面:香川・徳島、オンライン:全国)。
※この記事は、公的年金の制度の一般的な説明です。特定の保険会社・商品をおすすめするものではありません。金額は2026年度の額で、実際の額は加入期間・給料の記録・生年月日などによって違います。
出典
- 厚生労働省「用語集(いっしょに検証!公的年金)」 https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/glossary/
- 厚生労働省「公的年金と貯蓄の違い(いっしょに検証!公的年金)」 https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/manga/02.html
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」 https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20140710.html
- 日本年金機構「国民年金の『第1号被保険者』、『第3号被保険者』とは何ですか。」 https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kokunen/seido/kanyu/seidosetsumei/20140602-01.html
- 日本年金機構「国民年金保険料」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202610/100104.html
- 厚生労働省「社会保険加入の要件」 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jugyouin/taisho/
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」 https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001672868.pdf
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
- 日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-01.html
- 日本年金機構「報酬比例部分」 https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-01.html
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
- 日本年金機構「障害年金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
- 日本年金機構「障害認定日」 https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/sagyo/ninteibi.html
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html
- 日本年金機構「寡婦年金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-02.html
- 日本年金機構「死亡一時金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-01.html
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
- 日本年金機構「保険料を納付しなかった期間がありますが、今から納付することができますか。」 https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kokunen/seido/hokenryo/seidosetsumei/20120828.html
- 日本年金機構「大切なお知らせ、『ねんきん定期便』をお届けしています」 https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/teikibin/20150331-05.html
- 日本年金機構「ねんきんネット」 https://www.nenkin.go.jp/denshibenri_kojin/n_net/index.html
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html
(2026年10月14日時点の情報です)



